ハートリー原子単位系と MKSA 単位系との関係

ハートリー原子単位系は計算するには便利なのですが、論文などを書くときは MKSA 単位系に直す必要があって悩ましいところです。

ここでは、ハートリー原子単位系と MKSA 単位系の関係について説明します。

ハートリー原子単位系と MKSA 単位系は両立するか

ここまで「ガウス単位系でのマクスウェル方程式が成立するハートリー原子単位系」を説明してきましたが、「MKSA 単位系でのマクスウェル方程式が成立するハートリー原子単位系」というのはあるのでしょうか。

MKSA 単位系のマクスウェル方程式は以下のようになります。
\[\begin{align}
\nabla\cdot\mathbf{E}&= \frac{\rho}{\varepsilon_0}\\
\nabla\cdot\mathbf{B}&= 0\\
\nabla\times\mathbf{E}&=-\frac{\partial \mathbf{B}}{\partial t}\\
\nabla\times\mathbf{B}&=\mu_0\left(\mathbf{J}+\varepsilon_0\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t}\right)\\
\end{align}\]

ここで問題になるのが真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) と真空の透磁率 \(\mu_0\) をどうするかです。

この 2 つの変数はそもそも単位系としてメートル、キログラム、秒、アンペアの 4 つを基本単位として採用されたので、その間のつじつまを合わせる係数という意味があります。

しかも真空の透磁率は \(4\pi\times 10^{-7}\) という決め打ちの値で、かつ光速度 \(c\) と以下の等式が成立するので、\(\varepsilon_0\) に任意の値を入れることはできません。
\[
\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0} = \frac{1}{c} \label{eq:light-permeability-permittivity}
\]

まあ、ここでは固いことはいいません。ハートリー原子単位系において、MKSA 単位系のマクスウェル方程式の \(\varepsilon_0\) と \(\mu_0\) を適当な値を選ぶことができるかという問題に置き換えましょう。

原子単位系では基本単位として電気素量 \(e\)、電子の質量 \(m_e\)、プランク定数 \(\hbar\) の 3 つを基本単位として採用しましたが、これだけでは誘電率も透磁率も決められません。

まずはクーロンの法則に出てきてもらいましょう。
\[
F = \frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0 r^2}
\]
ここで、誘電率の取り方に自由度があるのでガウス単位系と一致するように選んでしまいます。
\[
4\pi\varepsilon_0 = 1 \label{eq:permittivity-mksa}
\]

するとクーロンの法則は次のように書けます。
\[
F = \frac{e^2}{r^2}
\]

また、\eqref{eq:light-permeability-permittivity} から透磁率が定まります。
\[
\mu_0 = \frac{4\pi}{c^2} \label{eq:permeability-mksa}
\]

\eqref{eq:permittivity-mksa} と \eqref{eq:permeability-mksa}を使ってマクスウェル方程式を書き直すと、次のようになります。
\[\begin{align}
\nabla\cdot\mathbf{E}&= 4\pi\rho\\
\nabla\cdot\mathbf{B}&= 0\\
\nabla\times\mathbf{E}&=-\frac{\partial \mathbf{B}}{\partial t}\\
\nabla\times\mathbf{B}&=\frac{1}{c^2}\left(4\pi\mathbf{J}+\frac{\partial\mathbf{E}}{\partial t}\right)\\
\end{align}\]
これは MKSA 単位系を持ち出すまでもなく、マクスウェルの静電単位系のマクスウェル方程式と同一のものになっています。

以下「マクスウェルの静電単位系」は単に「静電単位系」と呼ぶことにします。

ボーア磁子

「ガウス単位系」か「静電単位系」か違いがでるのがボーア磁子の表現です。

ガウス単位系では以下のように表現されます。
\[
\mu_\mathrm{B} = \frac{e \hbar}{2 m_e c} = 0.0036 [e^{-1} \hbar^2 m_e^{-1}]
\]
一方静電単位系では以下のようになります。
\[
\mu_\mathrm{B} = \frac{e \hbar}{2 m_e} = \frac{1}{2} [e \hbar m_e^{-1}]
\]

離散化されている値が、0.0036 か 0.5 かという話になるので、同じハートリー原子単位系でもボーア磁子が出てくる場合には、ガウス単位系より静電単位系の方が扱いやすそうですね。

直交曲線座標系
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