世界一正確な時計が次々に狂っていく? EU版GPS ガリレオ衛星測位システムでトラブル

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ガリレオ衛星に搭載されている、人類が到達しうる最も正確な時計である原子時計が次々にくるっていっていると、最近、欧州宇宙機関 (ESA) から発表がありました。

ESA公式サイトよりガリレオ衛星測位システム

ESA公式サイトよりガリレオ衛星測位システム。

原子時計と衛星測位システム

原子時計は原子や分子のスペクトルを利用した時計で、比較的安物でも誤差が 10 万年に 1 秒、最高精度のものだと 10 億年に 1 秒ぐらいの極めて正確な精度を誇っています。

原子時計は、GPS などで利用される人工衛星内部に搭載され、正確な時刻を計測することにより、地球上の正確な位置を決定するのに役立てています。

ところで GPS を含め、衛星を用いて地球上の位置を計測するシステムのことを、衛星測位システムとよびます。GPS はアメリカのシステムなのですが、衛星測位システムをアメリカに依存するのは国防上の問題になりかねないと考えられています。そこで、ロシアの「グローナス」や中国の「北斗」など、各国が独自に同様の測位システムの構築を行っているところです。

ガリレオも衛星測位システムの一つとして、ESA が開発しているもので、すでに測位サービスも昨年 (2016年) の 12 月から開始しています。

72 台の原子時計のうち 9 台が故障

このガリレオ測位システムの衛星で使用している原子時計がなんと 9 台も故障しているという衝撃的な報告が ESA によって発表されたのは 2017 年 1 月 18 日のことでした。

衛星測位システムは多数の人工衛星が必要になります。たとえば GPS ではトータルで 32 基人工衛星で構成されるシステムで、現在は 31 基は軌道上で運用されています。

ガリレオ測位システムの場合、最終的には 24 基のガリレオ衛星で構成される予定で、現在は 18 基がすでに運用に入っています。

それぞれのガリレオ衛星は、ルビジウム原子時計と水素メーザー原子時計の各 2 台、計 4 台の原子時計を搭載していますので、18 基のガリレオ衛星で合計 72 台の原子時計が軌道上にあることになります。

72 台の原子時計のうち 10 台が故障したということは、故障率は約 14 パーセント。かなり高確率ですね。内訳はルビジウム原子時計が 3 台、水素メーザー原子時計が 7 台故障したそうです。

宇宙では物理的な修理がほぼ不可能なので、故障した原子時計が直せるかというと、かなり難しいことになりそうです。

ただ、それぞれのガリレオ衛星に搭載している原子時計の 1 台でも生きていれば運用は可能です。現状では、これまでのところ運用不能になったガリレオ衛星はなく、各衛星は少なくとも 2 台の原子時計が生きているということです。

原子時計の故障の原因

原子時計が壊れた原因は現在のところ不明です。

開発元のスイスのスペクトラタイム社の同型の原子時計は、インド宇宙研究機関 (ISRO) でも使われていますが、同じような故障は起こっていません。

現在の推測では、ルビジウム原子時計については、故障の様子が似ているので、回路のショートか地上で行われたテストが障害の原因になっている可能性があります。

また、水素メーザー原子時計については、長いこと電源をオフにしていると電源が入らなくなるというシナリオが検討されているそうです。

何にせよ今後の打ち上げスケジュールに影響が出るので、早めに原因を確定させたいところでしょう。

ESA の今後の対応

ESA ではガリレオ衛星を予定通り打ち上げるか頭を悩ませているようです。

現在 、ガリレオ衛星は 18 基が軌道上にあり、今年も 4 基を打ち上げる予定でした。

ただ、普通に考えれば同じ原子時計を使っている衛星を打ち上げれば、同じペースで原子時計が故障してしまいます。これだけ原子時計の信頼性が低いとすると、打ち上げのスケジュールを遅らせてでも、とりあえず故障の原因を突き止めたくなるのが人情です。

しかし一方で、新しい衛星を打ち上げる前にこれ以上原子時計が故障すると、一部のガリレオ衛星が運用不能になり、昨年から開始したサービスを縮小せざるを得なくなるかもしれません。

いずれにしても、なかなか難しい選択ですね。

ガリレオ測位システムの歴史

ちなみにガリレオ測位システムの歴史は失敗の連続だったりします。

そもそも当初の予定なら、2008 年には予算 30 億ユーロでサービスが開始される予定だったのに、現状では 2020 年まで予算 130 億ユーロと当初の数倍かかる見込みとか、どこかの国のオリンピック予算みたいなことになっています。そのためにあやうく計画自体が中断されそうになったこともありました。

最終的には 24 基が衛星測位システムとして必要ですが、現状は 18 基でしかも 1 基は原子時計ではない別の理由でほとんど運用停止寸前だそうです。

まあ、挑戦に失敗はつきものなので頑張ってシステム構築を完遂させてほしいものですね。現在の見積もりだとあと 70 億ユーロぐらいは必要らしいそうですが。

参考

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