自己啓発の時間が労働時間なのは昔から

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厚生労働省が自己啓発をした時間も労働時間として扱うことなどを求めた指針を作成したといニュースが日経新聞に掲載されました。

なんでも業務に必要な資格取得の勉強や語学力向上の学習など自己啓発をした時間について、そうした状況に追い込まれる上司からの暗黙の指示があれば労働時間に当たるとしています。

またこの他にも、制服や作業着に着替える時間、業務終了後の清掃、待機時間、研修や教育訓練の受講なども、労働時間に含めるのだそうな。

このニュースに対して、「社会が非常に良い方向に動いている」とか、「厚生労働省頑張っている」とかそういう好意的な反応が多いようです。

ただ個人的には、これってただの現状の追認で、特に厚生労働省が何かを変えたとかそういうところはないのではと感じています。

小集団活動は以前から業務扱いだった

たとえばQCサークル活動などの小集団活動と呼ばれる自主活動については、2002 年に致死性不整脈で死亡したトヨタ自動車社員が過労死と認定された判決で、業務つまり労働時間と認定されています。

名古屋地裁 平成17年(行ウ)第34号 遺族補償年金等不支給処分取消請求事件

創意くふ う提案及びQCサークル活動は,本件事業主の事業活動に直接役立つ性質のものであり,また,交通安全活動もその運営上の利点があるものとして,いずれも本件事業主が育成・支援するものと推認され,これにかかわる作 業は,労災認定の業務起因性を判断する際には,使用者の支配下における 業務であると判断するのが相当である

つまり、小集団活動などの表面上自己啓発の活動でも、会社公認で、上司の支援の元に行われて、さらに簡単には離脱できないならそれは業務でしょう、という理屈ですね。

だから業務と関係ない専門書を勝手に読んでいるだけだと、それは業務とは見なされません。

ちなみに、この判決の後、トヨタ自動車では敷地内で QC サークル活動を行うことができなくなったというウワサです。

その他業務とみなされる条件

この手の業務とみなされるかどうかという点で非常にわかりやすく、まとまった判例が三菱重工業長崎造船所の 2000 年の判例です。この判決では業務かどうかが、以下のように区分されました。

  1. 始業前に入退場門から事業所内に入って更衣所まで移動
  2. 始業前に更衣所において作業服を着て準備体操場まで移動
  3. 始業前に水をまく
  4. 休憩前に作業服を脱ぐ
  5. 休憩前に作業場から食堂まで移動
  6. 休憩後に食堂から作業場まで戻る
  7. 休憩後にまた作業服を着る
  8. 終業後に作業場から更衣所まで移動して作業服を脱ぐ
  9. 終業後に手洗い、洗面、入浴をする
  10. 通勤服を着用
  11. 更衣所から入退場門

赤い太文字が業務とみなされ、それ以外は業務とは見なされませんでした。逆に赤い太文字の時間は、時間外労働として残業代を請求することもできるわけです。

判決の中でこの区分の理由が次のように述べられています。

最一小判平成12年3月9日 賃金請求事件

「労働基準法上の労働時間」とは、労働者が使用者 の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かによ り客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。

一言で言うなら、その時間帯が上司の指揮下にあると認められたら、それは業務でしょうということです。

まとめ

意外と日本の労働基準法は厳しく設計されており、逆に言うと労働者に対してかなり有利になっています。なので、このあたりの判例は比較的有名なのでチェックしておいて損はないと思います。

そうでないと、すでにある事実を追認しているだけなのに、「ものすごく基準が甘くなった!」「日本が改善した!」と誤解することになりかねませんからね。

参考

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