豊洲市場へ移転すれば年100億、移転しなければ3,700億の赤字

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最近、豊洲市場への移転問題で移転すれば毎年 100 億円の赤字になるというニュースが聞こえてきました。

この赤字の中身はというと主に「減価償却費」だそうです。

この膨大な赤字額を聞いて、豊洲市場への移転に対して疑問を投げかけている人たちがたくさんいます。

ただ、一方で実は豊洲市場に移転しなければ、3,700 億円の赤字が発生し、中央卸売市場の資金計画が破たんすることは、あまり知られていないようです。

赤字がなんでいけないの?

まずは商売において、なんで赤字がいけないかということを考えてみましょう。

赤字がいけないのは、最終的に商売が継続できなくなるからです。

赤字になれば、手元の運転資金が徐々に減っていき、運転資金がなくなると給料の支払いとか仕入れとかができなくなり、最後には銀行とかに設備とかが差し押さえられて、何もできなくなってしまいます。

この運転資金が商売の継続にはとても重要です。運転資金がなくなると、たとえ見かけは黒字でも商売が継続できません。これを「黒字倒産」と呼んだりします。

逆に言うと、運転資金さえあれば赤字は怖くありません。

たとえば銀座ウエストの目黒店は閉店まで 42 年間一度も黒字になったことがありませんでしたが商売を継続できていました。

これは運転資金が外部から継続的に供給されていたからでしょう。

豊洲市場の運転資金の計画は?

ここで豊洲市場の運転資金の計画を見てみましょう。

第5回市場問題プロジェクトチームの配付資料より豊洲市場の正味運転資本計画

第5回市場問題プロジェクトチームの配付資料より、豊洲市場の正味運転資本計画。平成31年から平成36年にかけて運転資本が急激に増加。

このグラフは、第5回市場問題プロジェクトでの配付資料で年間100億円の赤字のグラフの隣に書かれているものです。

平成 32 年から平成 36 年にかけて運転資本 (運転資金と大体同じ意味) が急速に増えていることが分かります。

これを見ると、運転資金計画には当面十分な余裕がありそうです。

それにしても、なんで毎年 100 億円の赤字なのに、運転資金がこんなにどんどん増えていくのでしょうか。

特別利益

運転資金が増加するトリックの一つは特別利益です。

豊洲市場の移転にともなって、築地市場の跡地を売却する訳なのですが、それが平成 32 年から平成 36 年の 5 年間で毎年 744 億円、合計 3,700 億円の収入になると見込まれます。

この収入は継続的なものではありませんので、特別利益として扱われ、毎年 100 億円の経常赤字の計算の中には含まれていません。

特別利益だろうが経常利益だろうが、何十年間分の予想される経常赤字を吹き飛ばせるぐらい現金を増やすことには違いないわけで、運転資金に余裕ができるわけですね。

原価償却費

運転資金が増加するもう一つのトリックが減価償却費です。

たとえば商売で使用する 500 万円の自動車を購入した場合、その瞬間での損失はゼロです。代わりに 5 年間使うとすると、会計上は減価償却費として毎年 100 万円ずつ経費として計上します。

ただ実際の運転資金の動きが減価償却費と一致するわけではありません。たとえば即金で一括払いで買えば、最初の年の減価償却費が 100 万円でも 運転資金は 500 万円減ります。また 5 年後にまとめて払うなら 5 年後までは減価償却費が発生しても運転資金は減りません。

豊洲市場は企業債とよばれる借金を利用して建設されており、その借金を全て返すのは 9 年後の平成 38 年度となっています。

企業債を返すまでは、いくら減価償却費があろうと運転資金は減りません。

また同様に平成 38 年に企業債が払い終わってしまえば、それ以上はいくら減価償却費で赤字になっても運転資金は 1 円も減りません。

豊洲市場に移転しなかったらもっと儲かるの?

ここまで豊洲市場に移転して赤字が毎年 100 億円発生しても、特別利益と減価償却費のトリックおかげで、当面の資金繰りに問題はないことが分かりました。

とはいえ豊洲市場に移転しなかったらもっと儲かるのではないのか、というもっともな疑問が出るでしょう。

その際に考えなくてはいけないのが、先ほど述べた企業債です。総計 4,000 億円以上を平成38年度までに償還する必要があります。

豊洲市場の跡地を売却するなら 3,700 億円の収入が得られて目処がたつのですが、このまま築地市場を使い続けたら当然その収入は得られません。

他の土地に移転しようと思ったら、また何千億円もかかります。

つまり、豊洲市場に移転しなかったら、3,700 億円の特別利益がなくなるので、逆に 3,700 億円の赤字が発生するのが避けられなくなるわけです。この場合、毎年何十億円もの企業債の利子というトリックでも何でもない負担が発生します。

ディズニーランド級の別案があるのでもない限り、黒字赤字で議論して豊洲市場に移転しない方向に勝ち目はありません。

まとめ

豊洲市場の移転によって、毎年 100 億円の赤字はどうかと思いますが、豊洲市場に移転しないで 3,700 億円の赤字を出すよりかははるかにマシです。運転資金の計画にも無理がありません。

もし、このまま移転が遅れれば築地市場の跡地の売却も遅れて、運転資金の計画が狂いかねません。

さっさと改良工事の上で移転して、その上で経営の合理化で赤字額の縮小を目指すべきでしょうね。

参考

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