政宗くんのリベンジ 第7巻・第8巻のフランス語が間違いだらけ

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政宗くんのリベンジがアニメ化されましたね。はやり物に弱い私はもちろん原作のコミックを購入して早速読んでいたわけですよ。

そのコミック第 7 巻と第 8 巻では、主人公の政宗くん一行が高校の修学旅行でフランスへ行くことになります。当然フランスが舞台になるので、リアリティーを出すためにフランス語が劇中にバンバン出てくることになるのですが、これがもうことごとく間違えています。

私もフランス語は大学の第二外国語で習った程度で、別にそれほど得意という訳ではありませんし、細かい揚げ足取りもそんなに良い趣味だとは思わないのですが、あまりにもミスだらけだったので一周回ってちょっとメモしておきたくなりました。

(2017年1月27日: 第 8 巻分を追記)

初級編

政宗くんのリベンジ 第7巻より、フランス人のミュリエルがネタのためにパンを仕入れてきたところ

政宗くんのリベンジ 第7巻より、フランス人のミュリエルがネタのためにパンを仕入れてきたところ。袋のフランス語に注目。

フランスで出会ったオタク少女がパンを買ってきたシーンです。何気ないシーンですが、パンの袋に注目です。

「Le Grenier á Pain (ル・グルニエ・ア・パン)」となっていますが a の上のアクセントの向きが左下を向いていますが、これは誤りで本当は右下を向いてなくてはいけません。

つまり á ではなくて、à が正しいです。

そんな細かいところと思うかもしれませんが、à は英語の at と同じくらいよく使われる前置詞ですので、フランス語を勉強したことがあるならミスしてはいけないレベルです。

ちなみに「Le Grenier à Pain」は日本にも上陸しているそうです。

中級編

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公がフランス人のミュリエルとよそ見をして ぶつかり相手を転ばしてしまった直後のシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公がよそ見をしてフランス人のミュリエルとぶつかってしまい、相手を転ばしてしまった直後のシーン。「サヌフェリアン」と一息で言う感じ。

政宗くんのリベンジ 第7巻より、ヒロインの家令の吉乃が立ち尽くしているとフランス紳士に心配されるシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、ヒロインの家令の吉乃が立ち尽くしているとフランス紳士に心配されるシーン。これも「サヴァ?」と一息で言う。

この2つはまとめて。

Ca ではありません。Ça です。

Ca だと「カ」と呼んでしまいそうですが、Ça と C の下にヒゲを生やすことで「サ」と読むようになります。C にヒゲを生やして Ç にすると、なんとなく S に似ているからサ行の音になるのだよというまことしやかな説を聞いたことがあります。

Ça も英語の It と同じぐらいの頻出単語なので、フランス語を勉強したことがあるなら、このミスもやはり恥ずかしいレベルです。

上級編

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公がフランス人のミュリエルとよそ見をして ぶつかり相手を転ばしてしまったシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公がフランス人のミュリエルとよそ見をしてぶつかり、相手を転ばしてしまったシーン。カバンから見える本のタイトルは「JAPONAISE」。

フランス人少女ミュリエルとの劇的かつお約束な出会いのシーンです。カバンからこぼれてしまった本のタイトルは

「JAPONAISE (ジャポネーズ)」

なかなか意味深なタイトルですね。

「Japon (ジャポン)」だったら「日本」という意味です。また「Japonais (ジャポネ)」だったら「日本人」という意味です。

では「Japonaise (ジャポネーズ)」はどういう意味かというと、「Japonais (ジャポネ)」の女性形なので「日本人女性」という意味になります。

逆の立場になって「フランス女」というタイトルの和書があったとすると、それがどういう内容かというのは、あまり想像してはいけないのではないかと思う今日この頃なのです (誤魔化した)。

超上級編

政宗くんのリベンジ 第7巻より、ミュリエルの自己紹介シーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、ミュリエルの自己紹介シーン

今度は主人公がぶつかったフランス人少女ミュリエルの自己紹介の場面です。

「高校 (リセ) の 2 年生 (プレミエール) におりマス」

ちょっと待ってください。

première (プルミエール) は 1 年生なのですが。

ちなみに高校 2 年生はプチ・ロワイヤル和仏辞典によると deuxième année de lycée (ドゥジエーム・アネ・ドゥ・リセ) だそうです。

このレベルのミスになってくると、ミュリエルが本当は高校 1 年生なのか 2 年生なのか自信が持てなくなってきます。

地獄編

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公の政宗がヒロインの愛姫と一緒にいたところを悪漢に囲まれているシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公の政宗がヒロインの愛姫と一緒にいたところを悪漢に囲まれているシーン。

主人公の政宗くんとヒロインの愛姫が悪漢に囲まれているところ、銃を突きつけた悪漢が一言

「Venir (ヴニール)」

いやまさかの一単語しかない決めぜりふなのにミスです。Venir (来る、ヴニール) の命令形は原形の Venir ではなく、 Viens (ヴィヤン、二人称単数形)、もしくは Venez (ヴネ、二人称複数形) です。

まさか決めぜりふまでミスってしまうとは。彼らは本当にフランス人なのでしょうか。

念のためですが、Venir (来る) の活用は、英語の Come と同じで、フランス語の学習においてかなり最初期に覚えるものの一つです。

煉獄編

政宗くんのリベンジ 第8巻より、雰囲気が悪くなったところをミュリエルがとりなしているシーン

政宗くんのリベンジ 第8巻より。雰囲気が悪くなったところをフランス人少女ミュリエルがとりなしているシーン。

主人公の政宗くんとヒロインの愛姫の雰囲気が悪くなっているところで、ミュリエルが場を取りなして一言

「rire (ライア)」

だからさっきと同じでフランス語では原形と命令形は違うのですよ……!

rire の命令形は「笑って」なら Ris (リ、二人称単数形)、「笑おう」なら Rions (リオン、一人称複数形) です。

あと原形にしても、 rire の読み方はライアではなくて リール ですから。

本当にライアって聞こえたのなら、英語でウソツキっていわれたのだと思います。

天国編

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公の政宗がフランス人少女のミュリエルとキスの見本をしそうになるシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、主人公の政宗がフランス人少女のミュリエルとキスの見本をしそうになるシーン

フランス人少女のミュリエルが、愛は素直に伝えるものだといい、キスの直前で一言

「Je t’adore (ジュタドール)」

いやいや、ちょっと待ってくださいよ。ここはジュテーム (Je t’aime) ですよね。

ジュテームとトレビヤンだけは、小学生でも知っているフランス語だと信じてたのですが……

Je t’adore も「大好き」には違いないのですが、「敬愛する」とか「熱愛する」とかいうニュアンスが強くて、恋人というよりむしろ「神様」とか「アイドル」とか「息子」とかが対象になることが多いのです。

まとめ

政宗くんのリベンジ 第 7 巻・第 8 巻はフランスが舞台でありながら、フランス人がフランス語を話すと八割方間違えているというおそろしいコミックに仕上がっていました。

実際のところ、一般的にいって、フランス語は第二外国語としてかなり人気です。大卒の正社員が何人か編集部にいるのなら、かなりの確率でフランス語選択の人もいてチェックができると思うのですが。

ただこれは、スポーツ漫画を読むときに、スポーツのルールにこだわっても面白くならないというのと同じような話かもしれません。しかし、やはり言葉ですからついつい気になってしまいますよね。

おまけ:初学者編 (間違いとしては一番難しい)

日本人が使うフランス語は間違えてもしようがないのというのはありますよね。日本人はフランス人ではないのですから。

ここでは作中の日本人によるフランス語のミスをいくつか指摘しておきましょう。学習者なら一度は通る道なので、リアリティーにあふれるミスが多いです。

政宗くんのリベンジ 第7巻より男友達の小十郎がフランス語の勉強を現地でしているシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、男友達の小十郎がフランス語の勉強を現地でしているシーン。

高校の友人の小十郎が現地に到着してから、泥縄でフランス語の勉強をしているところです。「アン・グハンドゥ・シィル・ヴ・プレ」はフランス語のスペルだと次のような感じでしょうか。

Un grande, s’il vous plaît.

問題なさそうですが、Un は男性名詞にかかる不定冠詞なのに grande が女性名詞なので、性が一致しなくなっています。男性に合わせて

Un grand, s’il vous plaît. 「アン・グラン・スィル・ヴ・プレ」

もしくは女性に合わせて

Une grande, s’il vous plaît. 「ユヌ・グランド・スィル・ヴ・プレ」

が文法的には正しいはずです。

あとついでに、フランス語の「r」の音は日本人にはハ行の音に聞こえるので、自分で発音するときもハ行で発音してしまいがちですが、フランス人に聞き取りやすくするならローマ字通りラ行で発音する方がいいと、大学の先生が言っていたのを思い出しました。

なので発音も「グハンドゥ」ではなくて「グランド」の方がいいでしょうか。ミスと言うほどではないですが。

政宗くんのリベンジ 第7巻より勉強したフランス語が走馬燈のように駆け巡るシーン

政宗くんのリベンジ 第7巻より、勉強したフランス語が走馬燈のように駆け巡るシーン。

こちらは悪漢に捕まってしまった主人公が警察を呼ぶために、これまで勉強したフランス語を頭の中で思い出しているシーンです。ここも間違って覚えていますね。

「ジュ・ウドレ・シャンジェ・ドゥ・ラルジャン・スィルヴプレ」という発音がついていますが、フランス語だとこんな感じでしょうか。

Je voudrais changer de l’argent, s’il vous plaît.

「voudrais」 に対応する発音が「ウドレ」になっていますが、実際は濁って「ヴドレ」と読みます。英語の “I want” の代わりに、フランス語では「ジュヴドレ」と言った後にボディー・ランゲージを駆使しておけば、どうにか意思疎通ができますので、この発音だけは間違えないようにしたいところですね。

ちなみにコマに書いてある仏文が change になっていますが、changer が正解ですね。初学者らしいミスです。

参考

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