東亜建設工業の不正・捏造がひどい 羽田空港滑走路地盤改良 施工不良事件

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2016年の振り返り記事を眺めていると、世間で話題になった割に見落としていた記事を見つけたりすることってありますよね。

東亜建設工業による羽田空港地盤改良の不正工事の記事もそんな感じで見つけたのですが、2016 年 5 月の当時の記事を漁ってみると、本当にヒドいという感想しか出ませんね。

工事での不祥事といえば昨年も橋桁が落下したり道路が陥没したりと話題に事欠きませんでしたが、これらは施工業者もよかれと思って失敗したところがあります。しかし、羽田空港の工事はは施工業者である東亜建設工業の工事に対する誠意のなさが際立っています。

なんでこんな大物事件を見落としていたのやら。

薬液注入工法による地盤強化

ご存知の通り、羽田空港は埋め立て地の上に建設された飛行場なので地盤が軟弱です。そのため大きい地震が発生すると、液状化現象が発生して滑走路が沈んだりデコボコになったりして使えなくなってしまうおそれが昔からありました。

そこで軟弱な地盤にセメントや水ガラスのように、一定時間経過したら硬くなる薬液を注入して地盤を固めてしまおう、というのが今回の事件で使われた薬液注入工法による地盤強化です。

地盤に薬液を入れる方法は様々なものがありますが、東亜建設工業が採用した方法は、地盤にパイプ穴を開けて、パイプの途中から薬液を注入して、そのまわりを固める方法です。

薬液注入工法の概要

薬液注入工法の概要。地面にパイプの穴を空けて、注入外管を通し、そこから薬液を地中に浸透させる

この工法では 1 箇所の注入ポイントで直径 2.5 メートルの地盤を球状に固めます。そのため広大な滑走路の下の地盤全体を固めるには、多数の箇所から薬液を注入して地盤を固める必要があり、以下の 2 点が重要になります。

  • 必要な数のパイプ穴を狙った場所に空けられたか
  • 各パイプ穴で計画通りの量の薬液を地盤に注入できたか

東亜建設工業の工事

それでは、羽田空港の滑走路の下の地盤改良工事では、どの程度薬液を注入できたのでしょうか。

2016 年 5 月 6 日に関東地方整備局が記者発表した資料によると、以下のような感じだったらしいです。

  • パイプの本数: 275 本の穴を開ける予定で、計画通りに空いたのは 0
  • 注入した薬液の量: 計画量の 5.4 %

いや、さすがに目を疑いますよね。

なお、パイプ穴は一応 231 本空けたのですが、1 本も計画通りの場所に空かなかったらしいです。また薬液の注入により、2メートル超の 10,450 個の球体ができる予定でしたが、2 メートルを超える大きさの球体は 1 個もできなかったとも報告されています。

当然、これでは工事は完了してなくて関係者が途方に暮れている最中だと想像するわけですが、実はこの工事は記者発表前の 3 月 18 日には完了したことになっていました。つまり、東亜建設工業側はきちんと工事は完了したと報告し、国土交通省側もこの報告に OK を出している状況です。

どうやら工事完了後の 4 月 28 日になって、発注した関東地方整備局に通報おそらく実態は密告のようなものがあって事件が発覚、5 月 6 日の記者発表につながったようです。

虚偽報告について

それにしても、ここまで清々しく工事に失敗していると、どうして国土交通省側が工事中に気づかれなかったのかという疑問がでてきますね。

国土交通省は途中の監督の一環として、たとえば穴を空けたり水ガラスを注入している際に立ち会って、作業状況をディスプレイ・モニターや記録用紙で確認します。また実地のサンプルを取って、検査室で品質を確認したりもします。

これだけ確認をしていれば、ここまであからさまな失敗工事には気づきそうなものです。

しかし、実はここでも東亜建設工業は信じられない不正を行っていたのです。なんと、東亜建設工業は、立ち会っている際のディスプレイ画面や記録用紙を改ざんしたり、検査室で検査するためのサンプルをすり替えたりしていたというのです。

本当ヒドいの一言です。

バルーングラウト工法と曲がり削孔のどちらがいけないのか

この後、東亜建設工業は過去 10 年間の 30 件の同様の工法を用いた公共工事について調査を行い、5 件の施工不良があったことを報告しています。当然これらはすべて虚偽の申告をしていたことになります。また施工不良がない 1 件についても、虚偽の申告をしていたことを認めています。

同様の工法と言いましたが、羽田空港の地盤強化工事を特徴付ける工法は 2 つです。

  • バルーングラウト工法
  • 曲がり削孔

この 2 種類の工法の施工不良について、過去 10 年間、国土交通省が東亜建設工業に発注した公共工事について見てみると、以下のようになっています。

  • 曲がり削孔は 6 件で実施、そのうち施工不良は 4 件
  • 曲がり削孔なしのバルーングラウト工法は 15 件で実施、施工不良は 1 件のみ

これを結果を見ると、バルーングラウト工法よりも曲がり削孔の採用に問題がある印象を受けますね。曲がり削孔を採用すると、施工不良率は 6 分の 4 で、60 パーセント以上の確率で失敗していることになります。曲がり削孔を採用しなければ、バルーングラウト工法単体では施工不良 15 分の 1 で約 6 パーセントですから施工不良率は 10 分の 1 になっています。

この事件、世間的には東亜建設工業が開発したバルーングラウト工法が問題だとみなされていることが多いですが、実はそもそも既存の施設を稼働させたまま工事を行う曲がり削孔を採用したのが、一番の問題であることが透けて見えます。

 バルーングラウト工法について

東亜建設工業は羽田空港の地盤強化の工事で、自社で開発したバルーングラウト工法を採用しています。

バルーングラウト工法は東亜建設工業の大野康年が中心となって 2008 年に開発された薬液注入工法の一つです。

従来の工法では、薬液が地盤ではなくてパイプ穴に沿って散逸してしまいやすかったのですが、バルーングラウト工法では前後にバルーンを置き、さらに短時間で凝結する薬液で前後の地盤を固めることにより、薬液の散逸を防いでいます。

また、薬液の注入の際にネットを使用することで局所的な圧力の増加を抑制し、特徴的な球状に地盤が強化されるようになっています。

バルーングラウト工法で強化した地盤を発掘したもの

東亜工業建設作成、国土交通省中国地方整備局 サイト内資料より。バルーングラウト工法で強化した地盤を発掘したもの。地盤が球状に強化されているのが分かる。

曲がり削孔について

羽田空港の地盤強化では、バルーングラウト工法とともに曲がり削孔が使用されました。

曲がり削孔自体はバルーングラウト工法でなくても、従来の薬液注入工法でも使用されますが、羽田空港での事件では東亜建設工業が独自に開発した者を使っています。

既存の建造物の下の地盤を強化したい場合、斜めに穴を掘ってさらに曲げて掘り進み、そこから薬液を注入する工法です。

東亜工業建設作成資料より曲がり削孔の模式図。

東亜工業建設作成、国土交通省中国地方整備局 サイト内資料より、曲がり削孔の模式図。途中で穴を曲げて稼働中の既存の施設の下の地盤を改良する。

 穴が計画通りに掘れなかった理由

計画通りの場所に穴が掘れなかった理由は、掘り進む際にどこを掘っているか位置が分からなかったからです。

東亜建設工業のバルーングラウト工法で使用する曲がり削孔では、穴を掘っているビット先端から発する電波を地上で受信して位置を計測しながらビットの向きを制御しています。しかし、地下のあまり深いところを掘っていると、地上で電波を受信することができなくなってしまうのです。

羽田空港の工事では、 40 メートル掘ったところで地上では電波を受信することができなくなったそうです。

電波が受信できない場合にどうするかというと、とりあえず掘ってみて、そのあと有線のジャイロセンサーを穴に通して計測を行うことになります。当然のことながら事後確認なので掘った場所がずれることもあるでしょう。

しかし、いったん間違ったところに穴を空けてしまうと、もう一回掘り直そうにも、その間違った穴に誘導されてしまうので、二度と正しい方向に穴を空けることができません。ドライバーでねじ山を間違って切ってしまうと、ただしくネジを回せなくなってしまうのと似たような現象ですね。

つまり長距離の曲がり削孔において、東亜建設工業の工法は目をつむりながら掘っているも同然です。

これではうまくいくはずがありません。

薬液が計画通りに空けられなかった理由

とはいえ、間違った場所に穴が空いたのだとしても、とりあえず規定量だけ薬液を注入すればいいのに、と思うところですが、実際には前述の通り予定の 5.4 パーセントしか注入できていませんでした。

なんでも薬液を注入しようとしたら逆流したので諦めたということらしいですが、逆流の原因は中間報告書を読んでもよく分からないところです。埋め立て地で現場の地盤が予想外のものだったというストーリーは分かりやすいですが、 あらかじめボーリングで地質調査を行ったにしては、やはりいくら何でも注入量が少なすぎという印象です。

ただ、そもそも掘った穴が修正を重ねて蛇行しすぎたために薬液を注入する内管を入れることもできないことがあったという記述を見る限り、そもそも曲がり削孔とバルーングラウト工法を組み合わせて試したことがないのではという印象がぬぐえません。

つまりそもそも、バルーングラウト工法が長距離のほぼ水平の蛇行した穴に適用できるかどうか、誰も試したことがないまま実際の地盤工事で使用してしまったのではという疑惑です。誰も試したことがないなら、あらかじめ地質調査をしたところで、システム的な要因でまったく注入できないこともあるでしょう。

これは開発者が開発スケジュールにプレッシャーを受けたときに、真っ先に削るのが非正常系での検査過程だという性癖を知っているので、個人的には納得がいくストーリーです。垂直や斜めの一直線の穴に対しては、バルーングラウト工法の性能を十分に検査していたのでしょうが、蛇行していたり水平だったりする穴に対して、どの程度信頼検査をしたかは藪の中です。

バルーングラウト工法の開発者の解雇について

2016 年 7 月に東亜建設工業の社内処分が発表されましたが、これも目を疑うものでした。

  • 諭旨解雇 2 名
    • 開発グループに所属する課長級社員
    • 執行役員常務の東京支店長 (当時)
  • 役員・社員の減給や降格

なんとバルーングラウト工法の開発グループの課長がクビにされています。

正直、開発職の社員が施工不良で解雇されるとはかなり異例に思えます。こんなことをすれば、東亜建設工業のバルーングラウト工法の競争力が落ちるのは避けられないのは首脳陣も分かっているでしょう。

実際のところの理由は想像できないわけではありませんが、しかしいずれにしても、本来なら全く関係のないはずの「施工不良」と「工法の開発担当者」の責任が結びついてしまうところに、この会社のシステムの残念さが現れているような気がしますね。

参考

東亜建設工業の不正・捏造がひどい 羽田空港滑走路地盤改良 施工不良事件」への1件のフィードバック

  1. 今現在東亜建設は別の地盤改良をしている。本当に大丈夫か!成田国際空港のバルーン工法もあやしいよ!今現在東亜建設が成田空港の地盤改良の調査してるみたい!

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