萌えキャラは穢らわしい~くま川鉄道、熊野交通、駅乃みちか騒動

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性的な連想をさせるものは「穢れ」ている

「そのコップに尿をいれたことがあるよ」

人間は精神的な生き物です。いくら洗ったと言っても、もうそのコップで水を気にせずに飲むのは難しいでしょう。尿をいれたことによって、そのコップは「穢れ」てしまったからです。

もちろんこの「穢れ」の感情には個人差はあるでしょう。尿を入れたコップでも全然大丈夫という御仁も中にはいるはずです。飲尿健康法という名状しがたい気分にさせる存在も耳にしたことがありますから。

排泄物以外にも実は性的なものも「穢れ」として扱われることがあります。「この売女!」という罵倒が最大級の侮辱として機能するのがその証左になるかもしれません。

今回は萌えキャラが性的な連想をさせる「穢れ」として扱われた最近の事例をいくつか紹介します。

18禁ゲームのキャラクターを鉄道の公式アイテムに使おうとした話

くま川鉄道が記念切手の発売を中止するという報道がありました。発売を中止した切手というのはこんな感じのものだったそうです。

くま川鉄道記念切手見本

販売予定だったくま川鉄道記念切符見本

ぱっと見、媚びたり露出度が高かったりしない、どちらかというと人畜無害な絵に見えます。この記念切符だけ単独で取り出して、もし性的なイメージが喚起されるというなら、むしろいかがわしいのはその人の頭の中と言えるでしょう。

しかし、このキャラは過去に18禁ゲームに出演したことがあるという前歴があります。この事実の前では、このキャラクターがいかに貞淑に見えようが純潔に見えようが、そんなことは大した問題ではありません。

出演したのは「まいてつ」という18禁ゲームソフトで、その中では記念切符のキャラクターと極めて酷似したキャラクターが存在しています。まあ、確かにどそっくりですね。

まいてつのキャラ絵

「まいてつ」公式サイト (18禁注意) より。左が「れいな」、右が「ハチロク」

くま川鉄道の記念切符の設定では、切符の絵のキャラと18禁ゲームのキャラは別人ということになっていたそうですが、これだけ似ているのなら、まあ偽名を名乗っているだけと見るべきでしょう。

ともあれ結果的に18禁ゲームのキャラを使って記念切符を発行しようとしたことに対して、くま川鉄道とゲームの開発元の Lose に非難が殺到しました。この非難は、いいかえれば18禁ゲームに出演したことのあるキャラクターは、たとえ媚びたり肌を露出したりしなくても、公共の空間に出るべきではない、ということです。そして、その理由は次のようなものが多かったです。

  • 子どもが電車に利用するので、子どもの目に入って情操教育にふさわしくない
  • キャラ名で画像検索したら、簡単にヌードに検索にひっかかるのでけしからん

まあ一言で言えば、記念切符に18禁キャラを使うなんて「穢らわしい」ということです。18禁ゲームに出演したキャラクターが視界に入るのも許せない。だから、公共の空間に露出させてはいけない。ましてや、記念切手をうっかり買って、それが18禁キャラだと後から判明したら怖気が立つ、ということになるのでしょう。

参考:

触手を連想させる萌え絵

熊野交通が新たに繰り出した萌えキャラも、ウェブサイトの配色とレイアウトが性的なものを連想させると話題になりました。

熊野交通のウェブサイトで、熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社をそれぞれモチーフにした巫女キャラのプロフィールのページが18禁ゲームのページにそっくりに見えるというのです。まあ、フォントや背景の配色・レイアウトがその手のゲームで典型的なものだったということなのでしょう。

熊野交通のマスコットキャラクター

熊野交通公式サイトより。マスコットキャラクターの三巫女、上から「元宮 てるて」、「那智 霧乃」、「速玉 ナギ」。

もちろん、この三人娘が出演する18禁ゲームなどありませんから、濡れ衣もいいところです。ねとらぼのインタビュー記事でもイラストの作者である大笆 知子さんが、憶測を完全に否定しています。

―― 出来上がったものを見て、雰囲気がそういったゲームのものに見えると思われましたか。

大笆:
特に思いませんでした。

―― そういったゲームのように見えるという意見があがっていたことはご存じでしたか。

大笆:
ちょうどRTが回ってきて初めて知りました。見えるという成人向けゲームのジャンルがマニアックすぎて、一般の方は分からないのではないのかなぁ思います(苦笑)。

まあ、さもありなんですね。そして、この記事の中での質問が興味深いです。

―― 今からでも背景を差し替えたいと思われますか。

大笆:
見る方によってとらえ方も異なると思うので特にその辺りはお任せしております。

わざわざ差し替えるか聞いたということは、文脈から見て18禁ゲームのサイトと見られる可能性があるレイアウトを続けるのか、という質問とみるべきでしょう。

性的なものを連想させるのが「穢れ」ということならば、ページの配色やレイアウトすら「穢れ」と見なされる余地がある、ということを示した事例だと思います。

参考:

性的な連想をさせる鉄道キャラ

東京メトロのキャラクター駅乃みちかも最近、性的な連想をさせるということで物議を醸しています。

駅乃みちかが最近、「鉄道むすめ」とコラボをして誕生したイラストが性的なものを連想させるそうです。

駅乃みちかのBefore After

駅乃みちか。左が修正前で、右が修正後。

まあ、確かに表情とかポーズとか媚びているように見えますね。

特にスカートがタイトなのかスカートの下の脚線がはっきり見えてしまっているため、批判を受けて修正されています。

このキャラクターは、18禁ゲームに出演したこともなければ、ウェブサイトのレイアウトがいかがわしいということでもありません。

なぜダメか、ということを少し考えてみましたが、単に仕草と服装のシワが公共の場にふさわしくないということになるのかなと思います。

参考

公共の空間

公共の場所の風俗は保たれる必要がある、というのはその通りでしょう。ただ、どのレベルなら風俗を乱していると言えるか、というのは人によって大幅に異なるところです。

たとえば横浜駅西口の誰もが通過するエスカレーターのすぐそばに、裸婦像が堂々と置かれていますが、苦情はほとんど入っていないようです。

「宇宙と子供たち」井上信道氏作。

はまれぽ.com より。「宇宙と子供たち」井上信道氏作。

なぜ、少女の裸のブロンズ像が許されて、着衣の萌えキャラが許されないかというと、ブロンズ像の方は性的なものを連想させないから、ということなのでしょうかね。やや納得しがたい点がありますが。

個人的に納得のいく説明は、萌えキャラはすでに自身が萌えキャラであるという「穢れ」をすでに背負っているから、というものです。なので、公共交通機関で視界に入れるのも「穢らわしい」ということになると。

もちろんこの感覚は人によって差が大きいところでしょう。長年萌え絵に慣れ親しんだ身としては、その感覚は薄いです。しかしそれでも萌えキャラが全面にペイントされた自動車を見て何も感じないわけではありません。

「鉄道むすめ」でも萌えキャラによるラッピング電車が走らせたことがあるそうですが、一部の人の嫌悪感を引き起こしただろうな、とは思うところです。

鉄道むすめのウェブサイトより。富士ライトレールのラッピング車両。

鉄道むすめのウェブサイトより。富士ライトレールのラッピング車両。

参考

穢れに対する禊ぎについて

ここまでと似た事例として、徳島の阿波踊りのコラボが挙げられます。

「阿波おどり2014」公式ポスター

ufotable 公式ツイッターより。「阿波おどり2014」公式ポスター。

このポスターに出てくるキャラクターは全員 Fate という18禁ゲームに出演していますが、特に苦情が大量に届いたということもないようです。その理由として以下のような意見が多く見られました。

  • 全年齢向けアニメがある
  • 全年齢向けゲームがある

つまり、全年齢向けコンテンツを経ることで、「穢れ」に対する「禊ぎ」になるということでしょう。

また、愛知県一宮市のふるさと納税では艦これのキャラクターの雷がふるさと納税の記念品の一つとして用意されています。

「ふるさとチョイス」より。艦これのキャラクター雷のフィギュア。

ふるさとチョイス」より。艦これのキャラクター雷のフィギュア。

「艦これ」ももともとは18禁ゲームです。これについてもやはり、同様の禊ぎの理論が当てられるかもしれません。

  • 全年齢向けアニメがある
  • 全年齢むけゲームがある

ただこの理屈は、なぜ全年齢向けアニメだからといって、公共の電波に禊ぎの済んでいないキャラクターを乗せられるか、という疑問には答えていません。またなぜ「記念切符」は全年齢向けの「禊ぎ」の一つとみなされないのか、という回答にもなっていません。

しかし見方を変えてみると、これが禊ぎの禊ぎたるゆえんかもしれません。禊ぎは決まった場所、決まった手順で行う必要があります。それが「全年齢向けアニメ」と「全年齢向けゲーム」であって、それ以外で禊ぎを行うことはまかりならない、ということかなと。

参考

で何がいいたかったの

昔は、秋葉原でもなければ萌えキャラなんて街中の風景に現れなかったのですが、最近はどこにでも見かけるようになってきました。

ただ「穢れ」を背負っているキャラクターだけあって、風当たりが強く、それが最近の炎上騒動につながっているのかなと思うところです。

ただ、萌えキャラを街中から撲滅する努力というのは社会的に損失だとは思います。萌えキャラがいることで、人々の流れが作り出され、それが経済の流れになります。聖地巡礼とはよくいったもので、メッカが人を集めるように、萌えキャラが人を集めるのです。

くま川鉄道の事例では、本来1000万円の収益を見込んでいたところ、騒動でキャンペーンで中止になった結果、ゲームの開発元がくま川鉄道に400万円の寄付をするということで落ち着きました。経済的には単純に600万損したというだけでなく、その600万円で職員が地元の商店街で買い物ができなくなったという連鎖的な機会損失が発生しています。

「穢れ」だからこそ、人を引きつける魅力があり、ただ単純に排除すればいいってものではないところが、悩ましいですね。

萌えキャラは穢らわしい~くま川鉄道、熊野交通、駅乃みちか騒動」への1件のフィードバック

  1. まいてつ自体、ロリコンアダルトゲームですし、さすがに公共でのコラボはまずいのでは?

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